「視察報告(関東地区大会)」

米国運輸産業並びに第4次産業革命等視察研修 」を終えて

 

未来創造委員会
担当副会長(視察団団長) 瀬山  豪
委員長          清水 英次

 

一般社団法人埼玉県トラック協会

 

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視察先は、物流企業として「カーボンエクスプレス」「日通ニューヨーク」「日通サンフランシスコ」
  
組織及び団体で、「全米トラック協会」「在アメリカ日本大使館」
 

 

AI・IOT企業は、「CTCアメリカ」「LOCIX」「SAP」
  
「box」「APPLE VISTOR CENTER」 計10ヶ所
 

 

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先ずは「自動運転」についてです。 運送会社は、

「まだまだ先のことで我々には関係ない」

・ところが日本大使館では、

「各州が、自動運転実験用に街の提供を申請しています。」

※自動運転による事故の賠償責任の当事者が誰になるか(誰が悪いのか)の法規的根拠が決定すれば、

「近い将来にはエリア限定で自動化される。」

現実に特定エリアでは、下記等の無人バスの運行はされています。

「ローカルモーターズ」の「電動小型バスOlli(オリー)」

 

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日本では、「高速道路の追従運転レベルまでの話」が、シリコンバレーでは、
「街中の車の双方確認が可能=信号がなくなる=事故がなくなる」

ですから、日本とアメリカでは、ステージそのものの次元が違います。

自動運転で発生した事故の賠償責任問題が訴訟になっていましたが、日本大使館やATAでは、

「各社のオートパイロットシステム設計が大きく改善され、
アメリカでは今後は車側の過失がなくなる可能性がある。」

参考:国土交通省「第4回自動車運転における損害賠償責任に関する研究会(平成29年9月)」

 

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★「電気自動車」は、乗用車については日本と同様、

「今後全ての乗用車はEVになる」

・トラックについては、日本が少し遅れているでしょうか、

「アメリカの2社(テスラニコラ)は、来年には製造開始」

※トラックの主要車両が電気自動車(テスラ)になるか水素燃料電池(ニコラ)になるか、あるいは別の電気トラックになるか、いずれにしてもATAでは、今後も各社の開発に協力していくということでした。

「EV開発やシェアリング対応ができないメーカーはなくなる」

 

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★アメリカにおける物流事情(トラック)と労働環境

・本年4月1日から、

「州を跨ぐ物流(長距離)の運行に関する時間的規制が厳格化」

※1日の運転時間は11時間、実運転時間8時間で30分の休憩、1日で14時間を超える就労は違反、
運行日数は2週間運行後に3日の休暇。※ちなみに日本では就労違反(最高拘束時間3516h)です。

・アメリカのトレーラートラックの95%が個人所有(オーナードライバー)その全車両に

「電子ログ記録装置(ELD)取付け義務化 & ネット回線で統括管理」

※違反が4回を超えると、車両停止命令。各社が運行管理業務に縛られている日本とは全く違います。

・高速道路には

「区間ごとに台貫車線(Weight Station)が設置」

※トラック及びバスは台貫車線通行時に重量オーバーが確認されるとその場で停止です。
   

・ほぼすべての運送会社が、

「業務・総務・情報等はクラウドによる一元管理 & 自動配車システム」

※カーボンエクスプレス社、バルク車専門、68台(136台)保有、見た目アナログですが、視察団の細かすぎる質問にも、担当部長がスマホで確認して即答してくれました。
   

・ドライバー年収は、就労時間及び物価から比較すると日本より若干高い程度。

「州を跨ぐ運行(長距離)で900万円程度」

・米国は3%の経済成長を継続しており、景気は非常に好調、失業率は5月時点で3.8%、ドライバーに限らず人手不足。

「ドライバーの平均年齢57歳で高齢化が顕著」

「今後10年間で100,000人のドライバーが不足

※本年4月の時間的規制の厳格化以降、収入の歩留まりがはっきりしたためドライバーの離職率が高まった

・商慣習や考え方は、

「職種に対しての執着がなく儲からなければ撤退するが主流」

※1980年の規制緩和で会社の多くが統廃合。規制緩和で業者数が増加したままの日本とは全く違う。
※就労&運行違反はオーナー乗務員自身、自動車事故等や管理体制問題に起因する、調査等がありえない。
   
※車両整備等については、基準が違うのか?規制のせいか?コストが大きく違う。例:タイヤ(価格は同じですが3年もつ)

 

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★「第四次産業革命」とは、

「あらゆるものがネットワークにつながり(IOT)、膨大なさまざまな
情報を収集、その情報を人口知能(AI)が解析し、そのビックデータを
活用し、機械やシステム等を制御していくことによる産業動向の変化」

※経産省では、第四次産業革命で、経営・商品企画・製造・調達・管理部門で543万人が仕事を失うと試算。
※内閣府では、AIによる自動化はさまざまなコストの削減だけでなく、労働人口問題の解決策として注目
参考:「内閣府の日本経済2016-2017 第4次産業革命のインパクト」

 

・今回の視察を通じて我々は、第四次産業革命とは、新たな産業構造だと確信しました。

「AI、IOT、ビックデータを利用して生まれるイノベーション」
=「既存の枠組みを破壊する行為そのもの」


※イノベーションとは、物事の・新結合・新機軸・新しい活用法を創造する行為です。

イノベーションには効率性を追求するためのものと、創造性を追求するためのものがあります。
我々が今取組んでいる様々な形態の3PL事業も効率性を追求するためのイノベーションです。

しかし後述した創造性を追求するためのイノベーションは、ともすれば我々の「運ぶ」という行為すらも飲み込んでしまうことすらあることを知っておいたほうがいいと思います。

 

トレンドは、「デジタルトランスフォーメーション」

現在のキーワードは、「シェアリングエコノミー」

・ベンチャーキャピタル※の殆ど(400社)がシリコンバレー。
※ベンチャーキャピタルとは、イノベーションを起こすスタートアップ企業(ベンチャーIT企業など)を資金だけでなく、営業、法律、財務など、不足な知見の全てを支援する会社で、CTC(伊藤忠テクノソリューション株式会社)もそのひとつ。

デジタルトランスフォーメーションとは、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念で、IT利用による業務プロセスの強化や、業務の置き換え、ITと業務のシームレス化できるスタートアップを支援。
※シェアリングエコノミーとは、世の中に余っているモノや人、スペースなどを、必要としている人に貸し出す形のビジネス

 

「デザイン・シンキングは、イノベーションを起こすプロセス」

・「SAP」は、2004年から「デザイン・シンキング※」を導入し、あらゆる分野で様々なイノベーション事業を起こしました。売上高は3.2兆円で2004年の2.5倍、純資産額14兆円(ドイツ最大)、現在「デザイン・シンキング」の総本山。
   
※デザインシンキングとは、潜在的ニーズを掘り起こし、プロトタイピング(試作段階からユーザーに利用いただきユーザー要望を反映させながらシステムを繰返し開発する)を通じて課題とソリューション(解決する方法)を検証する手法
初期のPCやiPodやWiiなどもデザイン・シンキング
で生まれた。

 

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★有名なイノベーション企業
   
・先ずはタクシー業界の「Uber」、Uberの自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリは、現在は70カ国450都市以上。
在米アメリカ大使館でお伺いしたところ、職員100名のうちタクシーを利用している人は1名だそうです。なぜタクシー利用なのかの質問に帰ってきた答えは「使わないとタクシーがなくなってしまうから」ですから、いかに凄いかがわかります。
・続いて民泊業界の「Airbnb」、現在では体験そのものも商品として取り扱っている世界最大の民泊情報サイトです。
バケーションレンタル業界という言葉さえ生まれました。日本でホテルの予約がインターネットで行われるようになったのがここ10年、現在85%がインターネット予約です。
このAirbnbによって生まれた新機軸は、「既存のインターネット予約事業までも飲み込もうとしています。」

 

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★ここで我々に近いところでの事例を言うと

・前述した「Uber」ではウーバーラッシュやウーバーイーツという個人向けの配送サービスを始めました。これに最も打撃をうけたのが米国大手の「UPS」。その後「UPS」が、輸送のオンデマンドサービスを開始しました。

「運ばない物流(3Dプリントのビジネスモデル)にイノベーション」

「UPS」は現在3Dプリンターを世界一所有する会社になりました。※前述のローカルモーターズ社「電動小型バスOlli(オリー)」も3Dプリント製造(製造時間44時間)。これは輸送そのものの形態を変えるイノベーションなのです。

 

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★イノベーション企業の多くが、資金を市場もしくはベンチャーキャピタルから調達します。初期の収益に関わらずその評価額によって資金力が極端に潤沢であることが特徴です。UPSでさえ大きな打撃を受けたのです。「OTTO」は「Uber」に飲み込まれました。因みに「Uber」「Airbnb」はユニコーン(評価額10億ドル以上)です。世界の金融動向から考えても、おそらく「この形態の起業」や「イノベーション」が主流になります。日銀は7月31日、金利上昇の容認を決定しました。これは、金利抑制の弊害を無視できなくなった(金利は上昇局面を迎える)ということです。

「資産担保型で資金調達する業界は飲み込まれる」

・これまで説明したイノベーションを誘発(運用)する形態(会社)には、いくつか種類があります。

・CTC等のベンチャーキャピタルのように初期の「スタートアップのイノベーション」をフォローし展開するもの
・SAPのように顧客や自社の疑問・要望・発案を自社の中でイノベーションとして具現化していくもの
・また一般から発案を探し自社の中でイノベーションさせていくもの

ここで、イノベーションを募集し、共にデザイン・シンキングする企業のPR映像がありましたのでご覧ください。これはシリコンバレーで我々が研修した内容によく似ていますので、本報告では解りづらかったことが伝わると思います。

 

・創造的破壊はもはやスタートアップ企業だけのものではない(IBM イノベーション・ガレージ)

「AI・IOTに関わる企業の全てが、イノベーションを模索し、それに投資しようとしています。」
「我々に有益なものもあれば、我々を飲み込んでしまうものもあるということを知って下さい。」

 

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★今回の視察を通して、これまでのモノや仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れ新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすイノベーションは、常に急激な変化(新たな収益構造)を求めています。これは技術の発明や化学の進歩とは一線を隔する内容で、日本では社会構造的に受け入れがたい感覚と、若干ではありますが乗り遅れると大変なことになるという恐怖感を感じました。
運輸や倉庫を事業の根幹とする我々は、既存の体制や流れの効率化というイノベーションには取組んでいます。しかし

「創造的(破壊的)イノベーションに対しての準備が必要」

かもしれないのに、国内の既存の法令等によって守られているからか「気が付いてもいない」と感じたのも事実です。

2015年国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」や、最近耳にする「ディープラーニング」は、今以上にイノベーションを誘発させそうです。我々に必要なことは、急速に変化する時代の先端思考を見失うことなく、そのプラットホーム(落着き先)を見定めて変化していけることです。

 

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★今回の「米国運輸産業並びに第4次産業革命等視察研修」を経て、我々自身が大変勉強になりました。そして今回の研修を通じて参加いただいた皆様の間に強固なネットワークが構築されつつあることも事実で、それは必ずや参加者相互の有益性に繋がると確信しております。

★「米国運輸産業並びに第4次産業革命等視察研修」は、事前研修2回・米国出張研修8日間・事後研修1回で構成しました。今回の報告は、米国出張研修8日間で強く感じたことをのみです。事前事後研修・米国出張8日間の各視察先での研修詳細についてはふれておりません。10月3日の事後研修以降すべての研修詳細を「(一社)埼玉県トラック協会HP」に公表リンクいたします。ご興味があればご確認頂ければと思います。

★結びにあたり、この研修の発案者である埼玉県トラック協会「鳥居会長」に、そして本研修のアシストを頂きました日通総研「大島取締役」に感謝申し上げますとともに、ご参会の皆様のご健勝並びに各企業のご発展をご祈念申し上げ、報告といたします。

 

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ご清聴ありがとうございました。

 

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