「日通(サンフランシスコ)」

アメリカにおける物流研修がいささか不足なような気がしたので、
   
急遽「日通サンフランシスコ」にお願いしてご対応いただきました。
   
アメリカの物流事情、日通の物流業務に関わるシステムの詳細等々、
   
丁寧にご説明頂き有難うございました。帰りがけには海上コンテナの
   
ターミナルまで見ることが出来ました。ご協力に感謝申し上げます。
   

先方からのプレゼン【米国のトラック輸送について】

・米国の国内貨物輸送量の分担率は、トラック80%、船舶8%が、パイプライン6%、鉄道4%、航空2%となっている。
・トラック輸送の市場規模は、年間726ミリオンドル(約80兆円)である。
・トラック運送事業者の売上1位がUPS、2位がフェデックス、3位がイエロー。上位4~5社が占める割合は10%程度で、残り90%程度が1社で5~6台程度の小規模事業者が占めている。
・米国内での輸送量は、多い順に機械、精密機器、自動車関連(海外からの完成車と国内製造用のパーツやタイヤを含む)。
・例えば、鉄鋼の輸送網は、アジアに一番近いロサンゼルスに貨物船が入り、デトロイト(GM、フォード等の自動車産業)まで鉄道でのコンテナ輸送、またはトレーラでの輸送となっている。
・近年トラックの運賃料金が高騰している。その要因は2つあり、1つ目が燃料価格の高騰、2つ目が、本年4月からドライバーにELD(電子記録)を義務付けられ、労働時間をごまかすことができなくなったことによる。

視察団からの質問

Q.ELDは米国内の全べてのトラック付けなければいけないのか?
A.州際輸送(州を跨ぐ輸送)のトラックが対象である。
Q.ドライバーの労働時間の規定はあるか?
A.ある。休憩時間や待機時間も含め1日14時間。休憩時間は8時間に30分。2週間の労働で3日の休日が必要。そこにELDが義務化されたため、それまで2日で輸送できたところが3~4日かかるようになった。運賃単価は変わらず日数が延びている。
Q.労働時間違反の罰則は?
A.違反は罰金となる。これらの影響か、今年に入ってから廃業するトラック事業者が出ている。
Q.運賃は上昇しているのか?
A.昨年の10月あたりから上がっている。米国内では感謝祭の9月、サンクスギビングデーの10月、クリスマスの12月が繁忙期。9~12月の4か月間で年間の5~6割の貨物が動く。燃料価格の上昇とELDの義務化が大きな要因。
Q.燃料価格の上昇分は運賃に転嫁できるのか?
A.転嫁できる。トラック事業者の価格据え置きとはいえないため、顧客と交渉して上げてもらっている。
Q.運賃が上がっているのに、廃業する会社が増えているのはなぜか?
A.運賃は上がっているが、輸送日数が2日間から3~4日間に伸びたため、ドライバーの儲けが少なくなり、ドライバーが確保できないため。極端な長距離輸送の例として、サンフランシスコからニューヨークまで約3,000マイル(4,800km)は、ツーマンで走り通しで3日半かかる。もしワンマンであれば6~7日かかる。規制が強化された後は、8時間運転後に休憩をとるなどの対応をすれば、日数も長くなる。この輸送の運賃は、これまでの1~2月の閑散期は約5,000ドル、10~11月の繁忙期は、8,000~9,000ドルまで上がる。
Q.規制が強化された理由は?事故がきっかけとか?
A.特にそういったことは無いと思う。
Q.ドライバー不足の影響は?
A.ドライバー不足はサンフランシスコ周辺も大変だが、最も不足しているのが中西部のシカゴ近辺。シカゴは鉄道貨物のレールヤードが集中するため、そこからアイオワ、ミネソタ、ミネアポリス等の州外にコンテナをトラック輸送するドライバーが不足している。ドライバーの賃金も上げているが、追いついていない。米国内に10万人程度ドライバーが必要といわれている。
Q.ドライバーの平均年収は?
A.目安として初年度は4万ドル、能力や輸送距離等により上は8万ドルあたりか。

【日通のトラック輸送システム「webDPS」について】

・当社のトラック輸送システム「webDPS」は、当社のオペレーター及び顧客がウェブサイドから、貨物の出荷地から配達場所、トラック、サイズ、貨物量、配送先、サイズ等を入力すると、貸切輸送(TL)と混載輸送(LTL)ごとに、利用するトラックの実運送業者の運賃情報を確認することができる。このシステムは、当社の全米56支店全てで使用している。
・混載の場合の運賃情報等は、シカゴのトラックチーム本部がもっているデータベースで検索する。
・顧客先にはパスワードを渡す際に、5~6%のマージンをつけて料金を紹介している。顧客は、トラック会社の運賃等を確認の上、出荷指示をもらった時点で、輸送関連の書類発行となる。貨物を引取った後には。そのトラックの追跡ができる。
・また、配送が終わった後にも、荷物毎の情報が検索できる。

視察団からの質問

Q.LTLの料金を出すのに後ろに持っているマスターデータは誰がどこで作っているのか?
A.当社のトラック部門がロサンゼルス、シカゴ、ニューヨークにあり、情報をシカゴに集約している。

 

視察団からのその他の質問

Q.この施設の構内でトレーラがUターンしてもアスファルト壊れないのはなぜか?日本だと壊れる。
A.ここは昨年修理した。材質は日本の方が全然よいと思うが。
Q.コンテナの最大重量は?
A.車両総重量の上限が80,000ポンド(約32t)。16mのトレーラで45,000ポンド(約20t)が上限。
Q.カーゴマチック社のシェアリングエコノミーのサービスで、荷主とドライバーをマッチングするシステムがあると聞いたことがあるが、御社では使っていないか?
A.使っていない。自社で情報を集めてマッチング作業をしている。アメリカと日本の違いは、アメリカのトラックは時間通りに来ないのが当たり前。1日2日遅れることも頻繁にあるため、マッチングは難しい。組み合せをする際は、ある程度幅を持って組ませるように調整している。
Q.遅れ等に対する違約金は発生しないのか?
A.発生する。例えばウォルマートやコストコのディストリビューションセンターは、日時指定があり、1時間でも遅れると結構な額の罰金が発生する。それを支払うのは、本来は実運送のトラック事業者であるが、元請けの当社との間で交渉となる。
Q.日本では民間事業者のマッチングサイトがあるが?
A.当社のトラック部門では、それのようなサイトが見れる。様々な利用ケースがあるが、例えばサンフランシスコからオレゴンの間で、当社は約60社の実運送事業者を使っているが、それでも繁忙期には車両が不足するため、料金は高くなるが、他のマッチングシステムも使う。
Q.オーバーウェイトやオーバーサイズの貨物を輸送する場合、州政府の特別な許可が必要か?
A.必要である。ここでは通行する郡ごとに申請する。許可には2~3日かかる。
Q.海上コンテナのドレージ見かけないが?
A.ドレージされている。当社でも年間20ft換算で6,400本動かしている。
Q.単車のスワップボディを見ないが。ヨーロッパでは結構見るが?
A.こちらでは単車で荷台を切り離せる車両はない。

 

Bグループ報告(石川・土田・直井)

1 訪問先企業による説明概要
アメリカ国内の輸送実行内容として、トラック輸送80%、船舶6%、石油等パイプライン4%、鉄道2%。年間輸送実績は7,200億ドル(約80兆円)である。主要企業としてはUPS、フェデックス、イエローなどで全体の10%を占め、残り90%は5~6台以下の小規模零細企業。
当該企業におけるメイン配送物は、機械、精密機器、自動車部品(GM,フォード)で、主な配送ルートはロサンジェルス船荷揚げし、鉄道もしくはトレーラーにてデトロイトである(荷姿はコンテナのまま)。
Web DTS(Web上での求荷求車システム)
基本仕様として、発地着地の選択、トラックサイズ、重量の確定、にて全米56支店で価格候補の提示。価格容認後、担当トラック会社へ指示、運行内容書発行、追跡ができ、オプションとして、システムパスワード開示、マージン付加(運賃の5~6%)ができる。
FTL(車建て)、LTL(特積み、混載)、発地着地の選択(全米50州、カナダ、メキシコ)をし、カスタマー情報※1を入力し概ね以下のような流れ&内容になる。
・LTL(特積み、混載)は、オークランド→何月何日→荷物種類№(50番台重くて安い貨物、400~500番台軽くて高い貨物)→1パレット(48×80)500パウンド(227キロ)→目的地(店舗、宅配、アポイントの有無)→対応可能業者提示
・FTL(車建て)は、郵便番号→何月何日→トラックタイプ(標準53フィート)平トレーラーやオーバーサイズトレイラーやフリーザー冷凍車選択、鉄道の使用有無
カスタマー情報※1 物量(例示20,000ポンド)、標準パレット(20枚分)、内容(例示瓶入り飲料・生鮮品)、許可関係の特別情報の入力。
その他、FTLに関してはシカゴ本社からローカル便の選定後料金の通達(時間にして数時間から1日2日かかることも)。荷物ごとに配達状況確認が可能で、配達後請求書の作成。検索は発地や着地などから可能。トラック故障時は、3~4時間、長いと1~2日ほど遅れることもある(ウォルマート、コストコ、ターゲットなどは罰金の規定あり)。

トラック運賃は値上がり傾向にある、主要因は、・ガソリン高・2017年末制定(2018年4月1日施行)のELD電子ログの設置義務(州際輸送は必須)化である。
基本法規として、一日の業務従事上限は待機を含み14時間、2週間の従事に対し3日以上の休暇を与える。ELD電子ログの普及により、取り締まりが強化され検挙されると運送会社、乗務員ともに罰金規定がある。結果以前は、2日間(2,000ドル相当)で運行していたものが、3~4日間かかり運賃の値上げもおこなわれているが、2倍近い経費の上昇は吸収できず、倒産が目立ち始めている。例年、9.10.11.12月に年間の5割40兆円の実行運賃が発生し1.2.3月は落ち着く傾向にあったが、本年は高止まりしていた。
運賃サンプルとしては、4,800キロ2名乗務で運行3日半、1名乗車で6~7日間、閑散期で5,000ドル、繁忙期で8,000~9,000ドル。
ドライバー不足は、シカゴを中心にアイオワ、オハイヨ、ミネソタ、ミネアポリス周辺で顕著、現状で10万人不足。賃金としては、近距離輸送40,000ドル、遠距離輸送80,000ドルで、可燃物やオーバーサイズなどはさらにブラス査定となる。

2 説明を聞いて感じたこと
日本の国内貨物輸送は、トラック91.3%海運7.9%鉄道0.9%航空0.1%となっており、若干ではあるが、日本のほうがトラック貨物に依存している。また、構成比別では、従業員1000人以上の82社を合計しても0.1%に満たず、10名以下49%30名以下合計で83%占める。小規模零細比率ではアメリカのほうが比率を占めるが、これは日本の法規との違いが影響していると考えられる。両国とも中小零細企業が大部分を占める業界構造となっている。
WEB DTSに関しては、日本に既存する受発注システム(WEBKIT、ローカルネット)に類似する点が多く、国際間貨物を対象にしている規模感以外は非常に似ていると思われる。
トラック運賃の値上がりについては、ガソリン高など日本国内と同様の傾向があるが、日本の慢性的労働不足起因とは異なり、本年4月に施行されたELD電子ログ設置義務により、時間・距離ともに管理され、違反した場合、会社、乗務員双方が罰せられるため運行内容を大幅に変更せざるおえない事態となっており、急激な経費増加を吸収できず、また利益の圧迫が激しく廃業者が相次いだ結果である。

 

Cグループ報告(井田・塚原・井田)

1 訪問先企業による説明概要
アメリカのトラック輸送は80兆規模。運送会社の割合は、1位UPS 、2位FedEx、3位イエロー含む大手5社10%、残りの90%は5~6台などの小規模の運送会社で占めている。アメリカでは機械の輸送が一番多く続いて自動車、自動車関連のパーツ、部品が多い。最近トラックの値段は上昇中でそれはガスの値段が上がったことによる。
「WEB DTT」について説明、日通独自の配車管理システムでそのシステムを使い発送などの依頼をかけている。そのほかに使っている配車システムは無いそうです。

2 説明を聞いて感じたこと
今回、日本通運サンフランシスコ支社に訪問し「日本と変わらないな」と思ったのが正直なところです。これは訪問先のすべてでも聞きましたが、「ドライバー不足」。アメリカでは10万人規模で運転手が不足しているそうです。これは日本でも同じで年々運転手が減ってきて、2006年の92万人をピークに現在は80万人を切っています。大きな要因は稼げなくなった(日本も同様)ということです。日通の方も言っていましたが以前まで運転主は運転日記を書いているだけで何時間働こうが、いくらでも時間をごまかし働き続けることができたが「ELD」を設置することが義務付けられてから不正ができなくなったことにより働く時間も限られ今まで通りに稼ぐことが難しくなったということと、導入による設備コストが運送屋に影響をあたえ実際にELD設置により今年になり倒産する会社も増えたそうです。
アメリカ全域では「州から州をまたぐ運送に限る」基本的には長距離運送を行う場合「ELD」設置が義務付けられています。日本でいうところのタコメーターになりますがアメリカにその「ELD」の取り付け義務が去年の12月に新規規制として変わったそうですが日本に比べて大分遅いなと感じました。
給料に関してですがドライバーの初任給としては日本円平均で「40万円」だそうです。これは日本より高く感じましたがアメリカに一週間研修で各地に回りましたが飲食やタバコが日本の倍しました。例えば日本では水は基本100円くらいですがアメリカで買う際には300円近くしました。同じくタバコも500円くらいで日本では買えますがアメリカでは1,000円近くしました。そう考えると初任給は「40万」は高くなないのだと感じました。給料は研修など経験を得て「プロフェッシャルドライバー」ともなれば給料も上がるそうです。その中でもタンクトレーラーなど危険物を運転手はかなり稼ぐことができるそうです。
そして驚いたのがアメリカのトラックは時間通りにこないのが当たり前だと聞きました。沖縄の方が友人との待ち合わせで遅れるのが当たりまえと同じ感覚?と思いましたが・・・そんなことはなく、アメリカ広いので道の状況などもすべて把握してでることも不可能、1~2日遅れることは普通のことだそうです。さすがに3日など過ぎるとお客からクレームが入るらしくその際に違約金も発生するそうですが、運転ドライバーの会社がはらうのもあるが、元請けが違約金を払うことも普通にあるそうで驚きました。
今回、日本通運サンフランシスコ支社を訪問させていただき、日本の運送業界は遅れているわけではないな。と感じました。 困っている点、改善点もアメリカと日本は同じでした。ただ訪問だけではなくアメリカという国の土地の大きさが違うので荷物の運ぶ距離が違う、運ぶ際に道路がすべて綺麗に整備されているわけではないのでどちらかといえば日本の方が環境はいいのだと思います。その中で環境に甘えず、アメリカより劣っていなかったからといって現状維持をするのではなく常に運送業界、自社の為に学び行動していくとが大事だと改めて感じました。

ページトップへ戻る