埼ト協 交通環境部 瀧澤浩幸

(一社)埼玉県トラック協会 交通環境部 瀧澤浩幸

埼玉県トラック協会は、平成8年の米国視察から22年経過した同国を訪問し、米国の運輸産業の現状と課題、取り巻く経済・労働環境、また第4次産業革命といわれるAI、IOTに関する米国の先進的な開発状況、先進事例等を視察することにより、当トラック協会における経営強化、輸送の安全そして多様な人材確保並びに育成対策としてのあり方を探るものとして、この度の視察研修に参加させていただきました。

【物流事業社関係】

カーボンエクスプレス・・・トレラータンク車(65両)
・不凍液、危険物関係、長距離、労働時間は日本より長い。
・港で荷物を降ろす資格をドライバーが保持。
・ドライバーの1名が全米ト協の教育指導にも当たっている。
・ドライバー平均賃金(7万~9万ドル)※業界は6万ドル。
・車両価格はヘッド(1600万円)・+トレラ(1000万円)
・若い労働力募集中。6か月のトレーニングあり。また若い人とは限らないと思うが、定着率はほぼ定年までとのこと。(※業界平均年齢57歳、カーボン社45歳)
感想・・・経営者はユーモアがあり、また事業者として、協会の教育の従事や給与等含めコンプライアンス及び経営上の観点から、かなり良好な会社と思われた。ただ自動運転については、「トラックは、難しいのではないか?」ということでカーボン社としてはまだ必要としてはいないという意味として感じとれた。

【団体関係】
全米トラック協会・・・約3000会員、支部は全ての州に一つあり、主な活動は、ロビー活動(自動運転、環境問題、立法上の法律の関係)が大きな部分を占める。
・当面の課題・・・ドライバーの労働力不足、向こう10年間予測される輸送量において最低あと10万人が必要。現在のドライバー平均年齢は58歳。一般業種より高齢。2020年に7万5千人必要。そのために人材確保、トラック業界のイメージをよくしたい。※10年前とはトラックの在り方が変わってきている。→政策決定者、メディア、議会関係者へプロのドライバーから話を伝えたい。
・規制等について(ドライバー不足)・・・運転免許取得年齢が現在18~21歳。州から州への運転の跨ぎができるよう法案を提出している。(車両のサイズは関係なし。)その法案提出にあたっては、見習い期間として160時間の実績、280時間の勤務実績や、筆記試験、技能試験、また過去の麻薬などの使用歴等考慮している。
・ロビー活動・・・トランプ政権の予測難しい中では自由貿易を考えている。
・安全担当より自動化について・・・自動運転のトラックは開発される予定。米国では貨物量が増加。そのため今後必須。しかし、労働組合は失業が懸念され難色を示しているが、全米の物流量は増加しており、東西のアメリカ大陸間の長距離輸送のドライバーに対して、家を離れる時間のスパンの緩和もカバーできる。短距離輸送などの宅配品は今まで通り。自動運転の最初の何年間は、補助者が同乗、同乗者はモニターするだけでなく貨物の安全確保、積み下ろしの確認もある。また、自動運転のトラックは、2両が隊列を組んで走行することにより、空気抵抗の低減が燃料費の節減となる。またブレーキの連動システムが求められる。
・環境問題について・・・燃費改善とCO2削減のために2014と2018年に二つの法律を制定。エンジンの効率高める(空気抵抗、タイヤ、オイルの関係)。
・燃料の関係について・・・特定の種類のものは奨励せず物流業者に任せ、自由な選択としている。ゴミ、バス関係はCNGを使用し始めている。今後はEV(電機)か水素の2つに絞られてくるのでは。どちらが良いかは自然に決まってくると思われる。
感想・・・ロビー活動は日本では「陳情」の意味あいが強いが、米国のそれは添付の日経新聞の記事からかなり違うもので、今後協会としてこの活動が求められると感じた。今回ロビー活動の説明いただいた方も法律家の方であった。

【シリコンバレー関係視察】~シリコンバレーの歴史~
サンフランシスコから60キロのところにあるスタンフォード大学では、1920年ごろ卒業しても就職もなく周辺は農地ばかり。これを打開するため理系学部を設け、その教授らが企業誘致に取り組む。最初が1928年ヒューレットパーカー社、1938年がディズニー関係でそこからスタートしてきた。また1970年代、サンフランシスコが「トランジェンダ」発祥の地であり性差別をなくすことなどの考え方も、更にシリコンバレーを発展させてきたひとつかもしれないと感じた。

CTC社・・・スタート・アップ=日本では起業する意味といわれているが、IT関係の起業する方の人的、資金的な支援をする会社。
・AI(人工知能)・・・NVIDEAのCEOは、ソフトウエアでなくAIから作っていく。
・IOT・・・町全体をスマート化しなければならなく、コネクトの段階で故障の余地があるため、期待先行、投資資金が回収できるか?※全てのあらゆる分野の物がつながるのは厳しいという意味かと思います(例えばコネクトカーは既につながり始めているので)。
・アマゾン、グーグルのクラウドを使用した場合、元に戻せない。使用効率の関係から自社で作るほうが効果的な場合もあり。
・物流のソフトは本格的にはこれからで、そのひとつは、これまでの経験を生かして「配車計画」からか。
感想・・・IT関連の総合的な話を聞くことができた。今回IT関係3社を視察し、3社ともセキュリティが非常に重要な部分を占めていることを強調していることが、印象的であった。

SAP社・・・シリコンバレーの中で米国以外の国(ドイツ)で成功した企業の一つで、その成功のヒントを求めSAP社への研修視察者は、年間数千人に達する。従業員数規模では、シリコンバレーの中で第13位。デザインシンキング(思考)の考えもとに経営。
・運送サービスの価格・・・消費者が決めてきた。
・ウーバー・・・乗車履歴によりばれないギリギリのとこで、業者がサービス価格を決める。アマゾンも同様。ウーバータクシーの空きスペース(後ろ)に荷物。
・UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)・・・運送からの脱却・・・印刷代行サービスで3Dプリンターにて製造業を脅かす。※既存事業の破壊的イノベーション(ただし、答えはどちらも経営する。)
・SAPの考え・・・お客様と一緒に解決していく。(本質の問題は何か)
感想・・・デザインシンキングの考えについては、他の書籍で分かりやすいことばを偶然見つけ、「従来の商品開発市場や需要でなく、人間を中心に据えた考え」とあり上記SAP社の考えと合わせると少しわかりやすいかと思いました。

BOX社・・・BOXのコンサルは、道を外れないように修正していく。また、様々なデータを一括管理(お客様の要望に応えカスタマイズとセキュリティで大量のデータ流出しないように)。今までお客様との共有のデータファイルは難しかったが、そのソリューションが可能。色々な会社の支援にあたるが、その会社とBOX社はあくまでも中立で偏らないとのこと。※視察参加の方から身近には、PC写真等の圧縮解凍が無料でできるものを提供(個人に対して)している会社とも聞く。
感想・・・シリコンバレーの各会社を視察してガイドさんの説明では、ここは現在バブル状態でITがいかに世界経済を牽引しているかを感じ取れました。また、農地で何もないところからシリコンバレーが発展してきたことは、「頭脳が街を造る」ということで、今後第4次産業革命を実感できるのは、すぐそこなのでしょうが、そのためにこの職業はなくなるかもしれないなど、複雑な気持ちでもあります。

【高速道路事情】
・目にするものはほとんどが片側4車線。片側6車線もあり(但し3車線目に中央分離帯があった)。
・トラック、バス専用の台貫があり、日本は停車しての計測だが走行中に計測できるというその車線に驚きました。
・シリコンバレーは通勤のための高速バス専用レーンがあり、渋滞を回避。
・今回は貸し切りバスであったが、キャップ付き以外の飲み物等(アイス含む)の持ち込みは禁止(汚れ等は全てドライバーの責任になるため)。
・原則高速料金は無料のようですが、州を跨ぐ時や橋を渡る料金などがあるようでその体系が複雑そうでした。
・大規模パーキングにおいて、大型チェアー式マッサージ機が20台位あり。但し誰もその時は使用してなかった。
・ガソリン価格は現在、日本円でリッター70円ほど。
・トラックバスは全てなぜかボンネット型なのかは、ガイドさんたちも回答できず。
・自動運転は日本でも高速で隊列走行実験行っているくらいなので、米国での高速道路上での自動運転は、結構早いと思われます。

【その他雑感】
米国の各州は競って自動運転の実証実験はわが州へということで、そのことが更に開発を前進させると感じました。ガイドの方からニューヨークは東京より物価が高く、ラーメン一杯が約2千円と聞き驚いた。実際サンフランシスコで視察員の方が食べ、やはり約2千円だったとのこと。また、サンフランシスコでドラッグストアやユニクロなどに入店し、価格調査をしたところ、日本より高いと感じた。但し、ホテル隣の酒屋さんで缶ビール(900ml)を買ったところ3ドルであったのでビールは安い。ちなみにその酒屋では、各種ビールの90パーセントが瓶で売られており、米国として環境に配慮していることがうかがえた。米国では景気が良く、人手が足りない。=(イコール)すべての人へのお金の循環が良いということだと思います。また、少子化にも陥っていないということです。翻って日本は少子高齢化も手伝って人手が足りない、また現在景気が良いといわれているが、一般の方にはその実感がなく、日本企業は万一に備えてかつての円高による製造業の海外生産、最近時のリーマンショックの経験から会社の内部留保を高めているためともいわれておりますが、このあたりの関係は、デフレ脱却と合わせ日本国は、米国に学ぶところがあるかもしれないと感じました。これを脱するにはふと、「デザインシンキング」思考もその解決方法のひとつなのかなとも思った次第です。以上、米国視察研修にあたって鳥居会長、瀬山団長、視察団員並びに未来創造委員会の皆様、そして詳細な企画に携わっていただいた関係各位に感謝しお礼申し上げます。

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